Book : 『絶対音感』レビュー

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『絶対音感』 最相葉月 著
俺は一応、絶対音感はある
半音くらいは間違えたりするものの、
基準音無しにおおよその音は当てることが出来る
幼稚園くらいからピアノは習っていたし
所謂絶対音感教育を受けたのかどうかは覚えていないが、
ソルフェージュと呼ばれる、先生が弾く音を譜面に書くという授業は
結果中学くらいまでずっと受けていた

でも、だからプロのミュージシャンになれた訳では全くない
(そもそも「プロのミュージシャン」ってなんだよ?て話はまた後日w)
クラシック系ならいざ知らず、ポップス界に絶対音感を持つ人なんて
ほんの一握りの人しかいないはず

むしろ大事なのは
所謂相対音感であり、
ハーモニーをキャッチ出来る能力であり、
音質の違いを把握出来る能力であり、
多くの音が同時に鳴っているところで、特定の音を拾える聴力だね
それは年齢関係なく、練習量に比例するものだ

言うなれば
料理人が、ある料理の調味料を当てることが出来るように
野球選手が、バットの振りの少しの違いを、ピッチングフォームの少しの違いを当てれるように
後天的に鍛えた技術のほうが重要な要素を占めている、と俺は思っている

実際俺も20代では聞き分けられなかった、
ブルース〜ファンク〜ジャズ系の音楽で、それぞれの楽器が何をしているのか?
を聞き分けられるようになったのは20代後半から少しずつ、て感じだ
ましてや音質に関しての耳は、
30代以降、トラック制作を本気でやり出してから習得した

そう、いくつになっても耳は成長するんだ

*****

っていう俺にとっての「絶対音感」とは
この本の中で多くのインタビューが紹介されているように
「あるに越したことはないけれど、
なくても大丈夫じゃないか?」
という程度の代物ではある

一般論でよくあるように
「絶対音感があると、
あらゆる街の騒音が音符に聴こえて大変」
なんてことは特にない

既に皆さんがやっているように
うるさいレストラン〜居酒屋で、特定の人の声だけを聞くことが出来る能力
というのは誰しもが持つもの
絶対音感を持っていたとしても、
ちゃんと、聴きたくない音にシャッターを降ろせばいいだけだ
ま、絶対音感を持つに至る過程に問題があると(スパルタ教育を受けたとか)
話は違うのかもしれないけどね

そんな、今までふわっとしたトリビアぐらいにしかなっていなかった、
「絶対音感」という概念を
正面から音楽家に、脳科学者に、実際に絶対音感教育をしてきた教師に
取材を取りつつ、歴史をひもときつつ、語られた本でした

個人的に面白かったのは
1)日本で絶対音感教育が普及した理由に
*明治維新後の西洋音楽教育をしていく上で、過剰な西洋音楽コンプレックスの元に進められた
*第二次大戦時に、敵の飛行機の音を聞き分けたりするのに使えるということで、普及した
という点だ
後者がなるほど・・・な話だし
前者は未だに、子供に絶対音感を持たせようとするマダムたちの心理に受け継がれているね

2)音感と調律はもちろんリンクする、ということで
調律の歴史も色々記されていた
A=440hz(摂氏20℃で)の調律は1939年の国際規約で決められた
1780年頃のモーツァルトのピアノは422hz
1885年ウィーン国際基準音会議で決められたのは435hz
1890年にスタインウェイのピアノが457hzになったこともあった
*純正律〜平均律についてももちろん触れられていた

→もう、こうなってくると、A=440hzで正確な絶対音感を持っていたとしても
全く役に立たないよね?

そんな、『絶対音感』という概念を軸に、
そもそも音楽に感動するってどういうことなのか?
音楽って何なのか?
と掘り下げて行く本です
興味のある方は是非ご一読を!
文庫本で読みやすくなってますよw




*****

俺のようなポピュラー音楽をやっていく上では
聞き分ける耳こそ大事だけど、
絶対音感というのは特にマストではない

むしろ今問題なのは調律だよね
どんなプロ歌手も歌の音程をコンピューター補正してしまう時代
それも大抵平均律という調律でされてしまう

でもハーモニーが気持ちいい、身体にも共鳴するのは
ピタゴラス調律〜純正律のほうなのだが
あまりに平均律な音楽に幼少期から大人まで耳慣れしすぎているため、
共鳴していて本来「気持ちいい!!」と言うべきものを
まさかの「気持ち悪い!」と反応する人が増えているそうなのだ

例えるなら、
化学調味料に舌が慣れすぎていて
オーガニック素材で作ったハンバーガーよりも
ファーストフード系のハンバーガーのほうが美味い!
と言っちゃうのと同じだ

そんな顧客なんだから、
そういうものを提供しておけば儲かるよ!
というのが資本主義の果ての現在だ

・・・・・
って言いつつ、
コンピューター上で制作されることが基本となった今の音楽業界では
上記のことを説明していくのは実に難しい
良心の塊のようなアーティストも、
普通に平均律で機械的な補正をしている時代
どのようにこの感じを伝えて行けばいいものやら・・・





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by jazzmaffia | 2016-05-11 22:56 | SWING-OによるReview | Comments(0)

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