Book : 『羊と鋼の森』レビュー

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『羊と鋼の森』宮下奈都著
先日読んだのが『絶対音感』だったところに
「最近売れてる本でピアノ調律にまつわる小説があるよ」と聞いて
早速購入して、2日で読み切った

うん、ちゃんと基音の歴史も記してあるし
(モーツァルトの頃が422hzだとか)
調律に関しても軽く、だけど平均律や純正律に触れてあったし
かなりちゃんと取材をしたと思われるしっかりした土台の上に話が進む
そして森の音に耳を傾ける、主人公の少年の心象風景もいい感じではある

なんだけど、
素敵な話ではあるんだけど
クリーンすぎる感じがあり
(性的なエッセンスがほぼゼロ)
大成功する話ではないんだけど
アメリカ資本主義/「夢」をベースに生きていくことを基調として話が進むし
ってあたりがひっかかり
結果
三浦しをん「舟を編む」
の読後感と同じなんだよねぇ

ちゃんと、それもかなりちゃんと取材をした上で、
「ピアノ~ピアノの調律師を素材にしたら
今の大衆に響くもの、
大衆が今、足りてないと感じてるところを埋めるもの
が書けるのではないか?
といった著者の気持ちが通奏低音としてずっと聴こえてくる感じ
つまりマーケティングで書かれている感じが気になってしまうまま終わってしまうのだ

結果
それは消費される商品としての小説となってしまう
うまくこの素材をポップな料理にしたなぁ!という印象のほうが強い
つまり「うまい!」という感想しか残らないのだ

ま、多くの人にとっては、
「だから」分かりやすくていいんだろうけどね
俺は、何か違うんだよなぁ
帯には「村上春樹のドライさと湿り気」
と書かれていたけど、
村上春樹的なのは
ひとりでいろいろ妄想しているところ、くらいかな
春樹のもう少し深いところに響く感じとは全然違うね

これも本屋大賞かぁ
「舟を編む」もそうだったもんなぁ
本屋大賞が好む感じなんだなぁ、てのはすごく分かった
この宮下奈都、そして三浦しをん、原田マハ、有川浩から宮部みゆきまで、
最近のヒット女性作家に俺が感じる共通点だね
「うまい!!!」「よく調べました!」
、、、でも、、、て感じ

先日、本好き先輩とも話したけど
ひとことで言うなら
「浅い」
という印象ですね
女性作家に限らず、
今売れてる本って、そういうものがほとんどな印象です
あ、音楽も一緒か

でも、それでもフォローするならば
今回は俺の本業に関する話でもあり、
かつ「よく調べて」くれているおかげで、
ピアノの調律を頼む上での注意点や
「そっか、ペダルの具合もリクエストしてよかったんだ!」
なんて今更なことを知ったり、な側面もあり
それに関しては読んでよかったなと思った次第


PS
「天下のリーゼンフーバーのピアノ」となってたのは
ほぼ間違いなくベーゼンドルファーのことを差しているんだろう
ま、少し悪く言っているので、敢えて名前を誤摩化したのかなと思われます



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by jazzmaffia | 2016-05-30 01:06 | SWING-OによるReview | Comments(1)

Commented by hiromi at 2016-05-30 09:47 x
SWINGーOさん、こんにちは。
お忙しい中、本をたくさん読まれていますね。

調律に関してのオーダーの参考になったとのこと。
以前、何かで本の中に一カ所でも響く言葉があれば
それは大切な出会いなのだというようなことを読みました。

他はあまり面白くなくても、買ったからには全部きっちり読まないといけないとかそういうことではなくて
一カ所だけでも出会いというところに感銘を受けました。

自分に関してはなるべく全部読んだり、他がつまらないと損をしたような気分になっていたので、目からうろこでした。
SWINGーOさんはただ感想を書かれているだけなので
話はちがいますが・・・

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