近所に出来た新しいそば屋でのひととき

 うちの近所に新しいそば屋ができた。そば屋激選区と言われる街でもあるうちの街の中心からそう遠くないところに、お洒落な小料理屋風情のそば屋である。そこが少し変わっているのは、平日昼間に営業していないということ。平日は夜しか営業していないし、日曜のみランチタイム営業をしている。それだけで「そば屋」を謳いながらも、「大衆的」を目指していないことが伺える。

 おかげで行くタイミングがなかなか訪れず、一度入ろうとした時は「そばが終わっちゃったんです」と言われて、断念した。今日は数ヶ月越しでやっと入ることができた日と成った。

 入ってみると、店はやはりカウンターのみの、小料理屋風情のお店だ。俺でちょうど5人目の客なんだが、もう席はあと3つほどしか空いてなさそうだ。メニューをみると、厳選されたメニューしかないし、もりそばにして800円もするし、あとはざるそばと、胡麻つゆのそばと、かけそばときつねそばしかない。計5つのみ。石臼で引いたそば粉を使用の、つなぎを使わない、いわゆる十割りそばのようだ。俺はひとまずもりそばを頼み、間をおいてすぐ桜海老のかき揚げ(これも600円もする)を頼んだ。

 注文までたどり着くと、あとは店の観察である。今日わざわざレポートのように記しているのは、その観察をレポートしたくなったからだ。

 店は30代と思われる、細身の女性一人で切り盛りしているようだ。声もキーが高めのキュートな声をしていて、石臼でそば粉を挽いている姿が想像できないようなビジュアルである。メイクの仕方からして、あまり着飾ることを意識してきたことがなさそうな感じがある。時々NHKなどでレポートされる、職人気質の女性、「跡継ぎがいないところに現れた女性!」的な空気感を感じる。そういう女性をみると、「こういう人はどんな恋をしてきたんだろう?」と想像してしまう。

彼女のことを気に入った男子はいたんだが、うまくタイミングが合わず、そうこうしているうちに男っ気のない、職人な日々になっていってしまったんだろうか?

いや
結婚を考え合っていた仲の男はいたんだが、まさかのひどい振られ方をして、一時落ち込んで、、、そんな時、昔から好きだった「そば」をふと自分で作ってみたくなり・・・

いや、そんなのは月並みなドラマっぽいかなぁ、、、でも意外とこういうのは月並みだったりするしなぁ、、、

 なんて想像をしながら、客を見渡すと、左に女性、左奥に中年夫婦と思しき二人、そして右におじさんだ。その、スーツを着た50過ぎと思われるおじさん以外は皆、そばを待っているようだが、おじさんだけは酒を飲みながら、つまみを食してるようだ。時間は8時半くらい。まぁ仕事帰りに小料理屋という気持ちでくつろいでいてもおかしくない感じの店だ。そんなことを思った時に、そのおじさんが、店の女性に声をかける

「出し巻き卵、美味しいねぇ。いい味出してるよ。。。。恵比寿で最近食べたのと同じかそれ以上だね」
そして店主は軽く戸惑うようなそぶりを見せながら
「あ、ありがとうございます」
そして会話が即止まる。

 「恵比寿」ってなんだよ、と突っ込みたくなる。あまりにも漠然としている。おじさん、食通ぶりたいのなら店の名前ぐらい言いなよ、もうちょっと味付けについて言いなよ、と突っ込みたくなる。

 あそっか、と一つ気づく。このおじさんはこの店主の女性を気に入ってるんだ。スーツの仕立てからして、金はなくはないだろう。「女性が一人でやっている、本格的なそば屋」なんて言ったら、ある種のおじさんはそれだけで惚れてしまうだろう。「応援してるよ!」というアピール一つもしたくなるだろうしね。

 しかし、店主のシャイ丸出しな感じもどうかな?と思う。そのせいだろうが、店内は軽い緊張感の漂う空間となってもいる。音楽も鳴っていない。

 600円もした桜海老かき揚げは、びっくりするくらい小さかった。平たい、直径10cmくらいのかき揚げ。これで600円かぁ・・・添えられた粗塩ごとうまくはあったが、大きいものを期待していた俺は少しがっかりした。

 そして注文してから20分くらい立って、やっともりそばが来た。うん、十割そばにしては、腰もあり細く切られた、美味しいそばであった。

 でも、、、俺にはこうした小洒落た小料理屋的なそばは、、、物足りなかった

 そんな30分ほどの、軽い緊張感のある時間を、酒も控えて、文体はアウトローな感じで好きだが内容がつまんない短編小説を読みながら過ごしていた。そしたらそんな文体の小説家気分で店を観察し始めてしまった、そんな夜。

このそば屋は、そば好きには勧めるかもしれないが、俺はもう行かないかもしれない。




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by jazzmaffia | 2017-04-22 01:50 | ひとりごと | Comments(0)

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