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カテゴリ:SWING-OによるReview( 32 )

Book : 村上春樹「騎士団長殺し」と河合隼雄「中空構造日本の深層」

文庫本になるのを待って早速読んだ、
村上春樹「騎士団長殺し」2018年
そしてたまたま見つけて購入した、
河合隼雄「中空構造日本の深層」1982年

この二冊が俺にはすごく共鳴しあっているように感じたので
まとめてレビュー、記しておきます

平成最後に記したながーーい話とも呼応する
「今の日本に不足しているもの」
と言う視点で記せればと思います

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『村上春樹は、なぜ「同じ話」を書き続けるのか』
と言う記事が「騎士団長殺し」が出た時に書かれていたけど
村上春樹を好きになれない人は、そこらへんの、
よくも悪くも「いつも同じ空気感」である事が入り込めない理由の一つであろう事は、わかる

この記事に詳しく分析されているけれど
東洋経済オンラインー村上春樹は、なぜ「同じ話」を書き続けるのかー
いつも
*喪失感や虚無感を抱えた主人公がいて
*何かを探していて
*現実と異界が接触していて
*異界には何か邪悪なものが存在していて
*現実世界に侵入してくる
と言う定型がある

村上春樹自身の言葉では
「とことん掘って掘って掘り続けていく事で見つけられる、
物語の「金脈」のようなものがあり
それは時代を問わず人類に訴えかけられる事ができるようなもの」
(正確な言葉はお調べください)
と言っていて、彼はそのために小説を書く時間を午前中の早い時間と決めていて
その「金脈」をキャッチできる体であり続けるためにも
走ることを筆頭に体を鍛える事も日課としていると言う

今作「騎士団長殺し」もご多分にもれず
いつものその「定型」の空気感で進む物語でした

■■■■
、、、一方
河合隼雄「中空構造日本の深層」というのは
臨床心理学者である著者が、
日本人〜日本という国の精神構造のあり方を
古事記などから始まる神話の構造分析から紐解く
というスケールの本

Noと言えない日本人、とか
リーダーシップに欠ける日本人、とか
つまり日本人には責任の所在がはっきりしない傾向が強いところがある
、、、という事は現代の日本人であるあなたも頷かれる事だと思うけど
その根源は古事記に描かれる神話においてもそうなのだと

役割が明確でない中心人物がいて、
その周りに相反する二人の神がいる
という構造で描かれる神話がほとんどだそうで
(例えばアマテラス、スサノヲのような強烈に描かれる神に挟まれて、ほとんど役割が描かれないツクヨミ、という三神)
中空構造になっている
この構造はどういう価値観をもたらすか?と言うと

異なる価値観や原理が排除し合わずに、
調和を得て相補的に働きながら
共存する事を可能にする構造
一体感を大切にする事で人間を万物と共生させる構造
(均衡の構造)

対して欧米的な価値観と言うのは
一神教をベースにして
近世以降の「科学の知」と統合されて
一面的な性格を持っていて
父性が強く、切断、排除の力が強い

噛み砕いていうなら、
答えを明確に一つに絞ろうとしがちであり
結果、争い事を起こしやすく、
植民地支配のような強制的な考え方をしがちだ

もちろん悪い事ばかりではない
そういう価値観であるがゆえに自然科学も発展したし
新しいものを生み出す力
新しいリーダーが生まれやすい側面は
間違いなくある

そんな欧米の価値観の影響が日本においても強くなったせいで
白か黒かの二択に迫られることが多くなり、
中空構造のバランスが崩れてきている、と

そして「科学の知」が世界を席巻している事で
日本に限らず、
元来、神話〜昔話などの形で世界中にあった、
「魔法」「霊」的なファンタジー〜メルヘンと言ったものが
抑圧されるようになってしまったと

そして河合隼雄は言う
「多くの現代人が抑圧しているのは、フロイトの時代とはむしろ逆に、「霊」あるいは「魂」の問題ではないかと思っている。現代人は性なる世界を重視するあまり、聖なる世界の存在を忘れているように思えるのである。フロイトの時代には、大学教授は性のことを語るのに顔を赤らめなければならなかったが、現代では、大学教授は霊のことを語るのに顔を赤らめなければならない」

これは1982年に出された本で、
70年代後半に書かれたものが中心になっているんだけど
全く2019年の令和の今にも響く言葉じゃなかろうか?

■■■■
そして村上春樹に話を戻すと
1982年は「羊をめぐる冒険」を発表した年
これは彼の「定型」が一つの完成をみた作品とも言われている
実際最近読み直したばかりだったので、
最新作「騎士団長殺し」と比べても
物語の土台、根っこは同じように思った

その村上春樹の「定型」小説のあり方に
俺が思ったのは(内田樹氏も確か指摘していたが)
村上春樹は
現代に必要な
神話を作ろうとしている

現代に必要な「神話」を彼は書こうとしている
そのような視点で過去作を思い返してもやはりそんな気がする

村上春樹作品における
「異界」
と言うのは
臨床心理学者が現代は抑圧されていると指摘した、
「霊」あるいは「魂」
の事じゃないか?と

二人の立場の違う執筆家が思う、
「今の日本の問題点、今の日本に不足しているものは何か?」
が一致しているように俺には思えた
(しかも両者ともその話をしようとしたタイミングが70年代後半)

確かに「科学の知」ベースな現代社会においては
霊の話、スピリチュアルな話はスピ系とか言われて
少し変わった人、扱いになりがちだ
でも、言葉で説明する事が難しい経験は実は誰でもする、してるはず

そういった
「異界のもの」「霊的なもの」
を受け止められるような「寛容性」こそ
今の時代に必要なのではないか?

前回のブログに記したような、
敵か味方かじゃなくて
白黒はっきりさせなくてもいいじゃないか
と言う感覚、
清濁併せ呑む
感覚の復権を問いたいのではないか?

、、、
なんて事を感じながら読むと
村上春樹の面白さ、
「定型」の「同じ話」なのに毎回売れてしまう理由がわかるんじゃないか?と

もちろん村上春樹は
中に出てくるたとえ話が秀逸だったりするし
音楽にまつわる話も、その作品自体の魅力を増す事に付与しているからいい
ある種「音楽的な小説」でもあるから俺は好きなんだけどね

最後に「騎士団長殺し」の中に出てくる、
騎士団長のセロニアスモンクを例えにして話す言葉が素敵なので
引用してこの長文を終わりにしよう

セロニアスモンクはあの不可思議な和音を、理屈や論理で考え出したわけじゃあらない。彼はただしっかり目を見開いて、それを意識の暗闇の中から両手ですくい上げただけなのだ。大事なのは無から何かを作り上げることではあらない。諸君のやるべきはむしろ、今そこにあるものの中から、正しいものを見つけ出すことなのだ 
by 騎士団長





by jazzmaffia | 2019-05-03 01:57 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Book : 「歴史」について考えさせてくれる本たち

「歴史」と言うとどうしても
**年に**があった
と言う形で、偉人、有名人を軸に振り返りがちで
それは俺自身を含めて
皆がそのように学校で学んできたからだよね?
「歴史」とはただただ記憶力テスト
(もしくは武勇伝)
みたいな学び方しか一般的には知られていない、気がする

果たしてそれが本当の「歴史」
つまり
昔の日本人と今の我々を直結してくれる話なんだろうか?
と問われると、確かに!だ
そんなことを疑問に思ったこともなかったからね、以前の俺も

信長がいついつ何をしたって、
俺にどれだけ関係があるんだ?
と普通なるよね
子供ならなおのこと

音楽におけるその時代のトピックも
江戸時代に将軍が何をしたってトピックも
そこに必ず市民がいる
そして教科書に出てこないタイプの史実があったりするはずなのだ

そんなことを実に興味深く、
考えさせてくれる本たちをたまたま最近読了したので
紹介しておこう


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「鬼がつくった国・日本」
小松和彦・内藤正敏 著 光文社

「鬼」となってるから
どんな怪談話か?というタイトルだけど
そっちではなくて、
日本の裏社会を支えてきた人たちを「鬼」と言う形で総称している
、、、と言うことで興味を持って買ってみた
(渋谷の古本屋名店 FLYIING BOOKSで)

確かに昔の日本には
イタコ、忍者、陰陽師などなど
冷静に考えるとよくわからない人たちが多数存在していた
その人たちがどのように国の中心部と関わってきたのか
結果、国を動かしてきたのか?
と言う視点で捉えよう!と言う本で、実に面白かった

天皇や将軍ベースの、
つまりトップダウンな視点ではなく
末端な人たちがどのように国の中枢に影響を及ぼしたのか?
と言う下からの視点、これは面白いよね
今なかなか学校やメディアでは教えてくれることのない、視点だ

京都という町が平安時代に入る時にどのように
陰陽師などに支えられて作られたか
どのように呪いを恐れ、呪いから守ろうとしていたのか?
そんな話から
実際俺も友人から聞いたことがあるんだけど
紀伊半島の山には「鬼」の子孫とされる、
「鬼」と言う文字の入った苗字の人たちが住んでいて
そういう人たちや、のちに忍者とされた人たちは
山々を越えて裏ネットワークを持っていたと

その裏ネットワークは時に国ともぶつかったが
基本、国の権力者たちはその裏ネットワークを利用した方が国を支配できる
と言うことで表と裏が繋がっていたと言うのだ

通常学校教育ではそうした裏社会の人たちは
「非人ひにん」と呼ばれ、差別されていました
と教えられることがほとんどなんだが
その実は差別ではなくて、区別だったと、棲みわけだったと
むしろ下々とされる人たちはそれを武器に強く生きていたのではと

どうしても都会ベースで我々は社会のあり方を捉えちゃうからね
飛行機や電車が誕生する前の時代は
確かに山を直に超えていかないと隣の街や国にも行けなかったわけでね
そんな時代の山々のネットワークはどれだけ日本においてすごかったかと

今の感覚でもって過去を眺めると、
逆に当時の感覚とずれてしまうことが多々ある
ってことだよね
深い!!

あと江戸末期1867年の
「ええじゃないか」
ってのがすごく面白かったね
なんでもその年の8月に突然起こった大衆乱舞のことで
それは翌年4月まで続いたそうで、
大衆が「ええじゃないか ええじゃないか」とはやしたてながら
町や村を練り歩いたらしい
ストレスのたまりまくった大衆による「世直し」の運動と捉えられたそうで
事実その年1868年の7月には明治維新が起きるわけだ

西欧における「ダンスマニア」ってのと同じだね
かなりのストレスを大衆が共有した時に
突然皆が踊り出すって話は読んだことがあったけど
日本にも起こったことがあるのは初めて知った
これから先の日本にもあり得るのかな???
すでに渋谷の交差点で始まってるって見方もあるね???苦笑

**********

「歴史の話〜日本史を問い直す」
網野善彦・鶴見俊輔 著 朝日文庫

偶然これも対談本で
同じく歴史は下からな視点であるべきだと
この中の言葉だと
「生きた生活」を軸に語られなければならない、
と説明されていた

そもそも「歴史学」自体が
これだけいろんな流派があるというのも
現代な我々にはあまり伝わってこない
柳田國男とかの存在は知っていたけれど
その社会的な意味の大きさだったり
かつこの著者二人は柳田國男とは相容れない部分があると言う
不勉強な俺には
「歴史学者」の中でも流派の違いがある
なんて知る由もなかった

その、「歴史」そして「言葉」の奥深い意味を大事にした世代、時代を
ある種羨望の眼差しで読んでしまう本でもありました

まず「百姓」と言う言葉の重層性から入るからね
俺も類にもれず、「百姓」=「農民」と思っていたが、
歴史上、「百姓」とはもっといろんな職種を指していたと言う
そんな、言葉の意味の変遷というのも「歴史」を考える上で重要だ

例えば明治維新以降の日本は
欧米の文化を積極的に輸入するに当たって、
欧米の言葉をどんどん訳語を作ることで対処した
訳語は瞬時に誰かが作れば済む
そして学ぶ者はその訳語の言葉を覚えれば学習したことになる
つまり、学ぶ速度はかなり早くなる
でもその元の言葉が持つ重層的な意味はないがしろにされてしまう、と

そして現在の歴史学〜果ては学問・教育の
多様性の無さへも不満を漏らす

「正しい思想はこれに決まった、右へならえ」
というのは学問じゃありませんから
という言葉で、二人は警鐘を鳴らす
団結の恐ろしさを説く
太平洋戦争へ向かった日本人を引き合いに出して

あと個人的には
日本の歴史というものは
年貢の話を筆頭に、そうしても「農業ベース」で語られがちなんだが
その理由は古来は中国から、中世近世は欧米から文化を輸入した際に
先方の国々が「農業ベース」の国だったからなんだと

でも実際の日本はご存知、海に囲まれていて
むしろ漁業ベースと言っていいくらいの国のあり方だ
そんな、漁業を軸に日本史を捉え直すってこともこれから大事だと
説明されるとまさに目から鱗だったね

こらまた深い!!

**********

現代の表層的な
答えを一つに絞るアメリカ資本主義
つまりは金銭ベースな社会に対して
俺も、(分かりやすくはあるものの)不満もあるわけで
その理由をこういう壮大な視点で説明されると
すごく腑に落ちる

現代が足りてないものは
現代が失ってしまったこの知性は
今後そのまま消えていくことはない、はずで
俺もその何分の一も把握できてるかわからないんだが、
何せ「あちら側の知性がある」というのは少なくとも理解した
そこだけでも持ち続けていきたいと思ったし
それを音楽活動にどのように還元するか?
と今後も考えていこうと思う

、、、いやぁ
日に日に読書が面白くなるわ
学ぶことの楽しさだね
視点が広がることの快感だね

SNSを捨て
書を手に取ろう

なんて今なら寺山修司は言うんだろうかね


 

by jazzmaffia | 2019-03-02 20:35 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Book : 「われらが歌う時」リチャードパワーズ

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「われらが歌う時」~The Time Of Our Singing~
Richard Powers 著 2003年

こんな長い小説を読んだのは人生初めてかも、、、
2冊の新書で1000ページ以上、分厚い文庫本4冊分くらいか?

読むきっかけは
2年前のBRUTUS「危険な読書」特集の中で
写真家の方が紹介されていて、その文面に惹かれて、
ネットで古本で仕入れた

ゆっくり読み始めたが、間もなく止まり、しばらく放置

そしていろいろ一段落した2019年1月に
処分するかどうか検証するために軽く読んでみたら、
意外とするっと入ってきて
1月末から本気で読み始めて、
なんなら中盤以降の700ページくらいはここ数日気合い入れて読みきった

*****

いやぁものすごい小説だったな
まるで誰かの伝記本か?と言うくらい詳細で、
かつ音楽史から、黒人と白人の軋轢の歴史から、数学史に至るまで
あらゆる知識が自然に登場人物にからめられていて
20世紀の歴史書にもなるくらいの物量だった

アメリカに亡命した、身寄りのいないユダヤ人の男と
フィラデルフィア出身の黒人女性が
国会議事堂前で、実在の黒人女性オペラ歌手アンダーソン女史が歌う
(これもきっちり史実通り)
その集会に偶然顔を合わせるところから始まり、
人種を超えた結婚は州によってはまだ犯罪扱いだった頃に
困難を乗り越え、さらなる困難に向かうべく結婚して
3人の子供に恵まれるが、
彼らは結果白黒どちらのコミュニティーにも属せない、
ミックス〜ラバと呼ばれる中
もがきながらも「音楽」を軸に生きていく、、、

ざっくり言うとそんな2世代に渡るシュトローム家の物語

アメリカにおける人種差別の存在はもちろん知っているけど
その実感というのはもちろん俺はわかっていない
「その人の意識次第でいかようにも出来るのではないか?」
「被害者意識を持っちゃうから
悪循環になっちゃってるだけじゃないか?」
なんて思っていたが
この本を読むと、本当に一筋縄ではいかない、
歴史とともに「差別」ありきの社会になっているが故の苦しさを
ひしひしと感じながら読み進めることになった

内田樹の言うところの「始原の遅れ」
その人がどう思おうが、
生まれてきた時にはすでに当然のように存在してしまっている、
「差別」と言う常識
その、やり場のない苦しみを軸にしつつも
そういうことのない、
「本人が生き方を選べる時代が来る」
と信じて進む異人種夫婦
そしてそんな無理な夢を抱いたから、
ミックスな中途半端な俺たちが生まれ、苦しんでるんだ
と親をも憎む勢いで生きていく子供達

語り部ジョゼフ(ジョーイ)の兄ジョナは
両親の教育のおかげもあって
紆余曲折ありつつもクラシックの歌手として大成していく
弟のジョゼフは兄の専属ピアニストして兄とともに最初の音楽キャリアを積む
妹ルースは母の死をきっかけに、兄弟と分かれてブラックパンサー党に、、、

と言う展開とともに、
ニーナシモンからエラフィッツジェラルドからサラボーンから、、、
89年頃まで話が進むとNWAまで出てくるし
クラシックもバロック以前の音楽までさかのぼる
ある種700年近くの音楽史の話にもなっている

ユダヤ人の父デビッドは数学者であるから
アインシュタインを筆頭に数々の数学者の話が出てきて
相対性理論から何から、時間の定義についての話もいろいろと出てくる

そして
最後の結末がまた美しい
ハッピーエンドでもなく
その逆でもなく
結果時空を超えた話になるところが美しい

音楽がこれほど文字化出来るんだ!
しかも翻訳本なのに!!!
と言う驚きもあった

イリノイ州出身の勤勉な白人作家リチャードパワーズ
恐るべし作品を残したものだと思う

ただ、
この文字量がこの内容のためには必要なのが分かりつつも
この文字量を読もうとする人は、昨今そうそういないだろうなぁ、
と思うと残念でもあるな
この文字量が故、いろんな人に勧められる本じゃないのが残念

でも、俺個人にとっては
49歳にして衝撃的な読書体験ができるなんて!
と本当に嬉しく思う
読書でこの、後々残りそうな涙がなんども出てきたのも
久しぶりかもしれない

とにかく
すごい本でした

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by jazzmaffia | 2019-02-04 20:21 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Review : 映画"Whitney"は見ない方がいい

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Movie : "Whitney" 2018
監督:ケヴィンマクドナルド

いやあひどい
単刀直入に言っておく、
これは見ない方がいい
敢えてのネガティヴプロモーションでもない
頼むから、見ないでほしい
少なくとも彼女Whitney Houstonが好きだったことがある人はなお

映画"Bohemian Rhapsody"も見てきたからね
それはそれで物申したいことは沢山あるけれど、
少なくともQueenと言うバンドの功績を確認できる映画であり
Queenを知らない人にも魅力を伝えることのできる映画には
少なくともなっている
(だからヒットしてるしリピーターもいるわけでね)

ところがこの"Whitney"はどうだ?

まぁまぁキャリアの全貌は分かっているつもりの俺からしても
見たことない動画やゴシップネタは満載だけれど
何せ携帯や簡易カメラで撮られた劣悪な画像が大半を占めるので
まず言えるのは
「映画館で見るべき質ではない」
ほんでもって、
基本線が、
「彼女の人生は苦難に満ちていた」
と言うネタしか出てこない

昔からのファンならご存知、
悪夫Bobby Brownのせいで全てが狂った!
というイメージが覆ってしまうほどの
彼女自身のヤク好きっぷりはそもそもだったって話とか
Amy Winehouseと同様、
娘が売れてからしゃしゃり出てきた父親のせいで
いろいろ狂っていく話、
ましてや幼少期にまさかの従姉妹のせいで精神的ダメージを被って、、、
そんな情報、申し訳ないが知りたくもなかった

百歩譲って、
黒人に限らず、
「売れる」と言うこと
それも半端なく売れて「スーパースターになる」
ということが本人と家族にもたらされる問題点
黒人社会から成り上がることの難しさ
アメリカ社会の芸能界が孕む問題点
、、、などを伝えるドキュメンタリーとしてはいいのかもしれない

、、、でも、何もそれなら
彼女だけを素材にしなくてもいいじゃないか!
と思った

そこで思った
「こんな、彼女のイメージがむしろ悪くなるような映画を、
映画を見終わった後に、彼女を歌を聴きたくなくなるような映画を、
なぜWhitney財団は許可したんだろう???」

でも映画が進んでいくうちに、分かった
(あくまで俺個人の想像の範囲であって、ちゃんと裏はとってないけれど)

ホイットニーの周りは
父親から兄弟から義理の兄弟から
あらゆる人たちが彼女の周りにくっついて
ツアーから何から一緒に世界を回ることで
売り上げをシェアして生きてきた人たちだというのが
映画を見てるとみるみるわかる

そして彼女は亡くなった
つまり
彼女の取り巻きな連中の
実入りが亡くなってしまった

だから
内容がどうあれ、
差し当りの実入りのために
この内容にも関わらず
映画の上映を許可したのではないか?

プライベートでどんな人生を送ったとしても
彼女が素晴らしい歌を残したことには違いないわけで
そこにもう一度スポットを当てるのにいいタイミングなのに、、、

彼女が召されてから
2,11でもう7年も経つ
亡くなってからもなお、
食い物にするというのは
彼女の遺族に限ったことではない

Marvin Gayeの遺族が
Pharelle Williamsプロデュースの
Robin Thicke "Blurred Line"
を著作権侵害で訴えたこと、などもひどい話だ
ということはこのブログにも記したけど
https://jazzmaffia.exblog.jp/21645311/
https://jazzmaffia.exblog.jp/21765166/
彼らの場合は
「これは訴えれば金を取れる」
という視点しかない
おかげで現在オマージュという形で
古い音楽をリスペクトする流れが作りにくい時代になってしまったのは
上記ブログに記した通り

ホイットニーの遺族にも同様の
「目先の金銭しか考えていない」感じが
ありありと伝わってくる

彼女の功績と影響は
もっといい形で再評価されてしかるべきだと思うのは
俺だけじゃないはず

もう少しいい形で彼女の功績を振り返るのには
まだ時間がかかるのだろうか、、、

何せ、
こんなひどい映画に金を払って見て
そんな財団が儲かるようなことを
ぜひ避けてほしいものだと思う
そんな、珍しく「頭に来た」映画でした

PS : 実際、上映中に携帯を出す奴が周囲にいたり(それはよくないことだけど)、
うんざりしてるお客さんも多数いましたとさ

by jazzmaffia | 2019-01-14 01:45 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Album : "Quiet Emotion" by 具島直子1997年

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"Quiet Emotion" 具島直子 1997年

決して名盤ではない
音楽的にすごい深いわけでもない
歌がすごいわけでもない
かつ、大して売れたわけでも、、、ない
(関係者の方 スンマセン)

でも、どうしようもなく思い入れのある作品
結果、どうしようもなく大好きになってしまった作品
というのは音楽好きならば少なからずあるだろう

俺にとってこのアルバムはまさにそんな作品

大して売れたわけじゃないのは確かだけれど
リアルタイムで、当時ライブで関わっていた女性シンガーが
このアルバムのなかの一曲、
Tr-8(B-3) "So High, So High"
をカバーしたいと言ってきて、この具島直子の存在
そしてこのアルバムの存在を知った

https://youtu.be/Yr7gEco4P7Q

素朴で大した展開もないのだけれど
リハーサルからライブにかけて一回か二回やっただけなのに
なんだかすごく俺のツボを刺激して、体に入ってきてしまった

アルバムを購入して見たら
ほんの少しアッパーなのもなくはないけれど
ほぼ全曲、メジャーセブン、マイナーナインスの響き&ループ
ワンパターンなんだけど、ちょっとしたメロディーセンスが光ってて
なんかソフトに胸にもたれかかってくるような曲ばかり

思い返せば1997年頃、この曲を知った頃は
俺も月-金の週5のバイト生活時代
年は28歳になる頃

「お前、そろそろ音楽で食ってくのを諦めた方がいいんじゃない?」
とよく言われていた頃だ

そんな、
あがいてもあがいてもなかなか前に進めない頃に聞いていた音楽

そりゃあ思い入れがあるに決まってるよね
この曲、そしてこのアルバムを流しただけで
ふ〜〜っとあの頃の切ない新宿の街の風景が浮かんできてしまう

個人的にはその"So High,So High"と
シングルにもなったらしい、
Tr-4(A-4) "No,No,No"
がフェイバリットだな
これもまたいきなりDm9のピアノの響きで始まる曲
心地よい気だるさに包まれる曲

日本のSADEといった趣の大半の曲に
ほんの少しだけ、当時大ブレイクしていた、
Jamiroquaiの"Virtual Insanity"的なエッセンスをまぶした
そんなアルバムだね

そんな具島直子、
日本のポップス史から忘れ去られていたと思っていたら
昨今のシティポップブーム&発掘ブームのおかげで
かつその「大してリアルタイムで売れなかった」ことが功を奏してか
昨年大きくプッシュされる形でHMV record shopがレコード再発をスタートさせた

まず1stの
"miss G." 1996年
がレコード化され、
それは俺の中では具島直子節がまだ未完成な作品なので購入せず、
この夏についにこのセカンドアルバムがレコード発売されて、
早速購入しました

3rdも合わせて発売されているけれど
個人的にオススメなのはやはりこの2ndアルバムです

まったりと秋の夜を過ごすのに良き
メロウでしかないアルバムです
Apple Musicなどでもアルバム聴きできるので
是非聴いてみてください

*****

そんな、くすぶっていた20年前を思い返しながら
目の前をみると
明日11月12日は
バンマスという形で関わらせてもらう、
HipHopグループDoberman Infinityの
武道館ライブ!!!

いろんな思いと感謝を胸に
でも精一杯の「俺だからできる演奏・演出」を
主役の方々を通してお客さんに届けようと思います

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by jazzmaffia | 2018-11-11 23:51 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Movie&Book : ピアノにまつわる作品レビュー

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『黙ってピアノを弾いてくれ〜Shut Up Play The Piano』
出演 :Chilly Gonzales 監督:フィリップジェディック 2018年

友人が勧めるので見てきた
渋谷シネクイントにて
うん、アルバムは何枚も持っているが
そういえば素性やキャリア全般は知らなかったので
カナダのお坊ちゃんだということだったり
でも最初のキャリアがパンクバンドだったり
最初にブレイクしたのがベルリンでラッパーとしてだったり
、、、などなどぶっ飛んでてビックリした
そしてそのエネルギーにやられたね

「インタビューを受けてもつまらない質問が90%
聞かなくたってわかることをなんで聞くんだ?」
という不満をきっかけに
「俺じゃなくてもいいんじゃないか?」
という発想の元、ゴンザレスオーディションを企画して
全く同じセリフやラップをできる人を選んでいくくだりなんて痛快だ

でもってラップが思った以上にちゃんとしてる
なんなら素晴らしい

「アーティストなら昔は黙って音楽をやればよかったかもしれないが
今はそうじゃない
だから俺はエンターテイナーとして
キャラを演じてるんだ」

「先人の影響は無視できない、リスペクトしてるよ
でも反骨精神も必要だよね、ちょうど半々くらいがちょうどいい」
などなど
響く言葉も多数だったしね

無精髭具合や挑発的な言動を見てると
まさに現代のゲンズブールのように俺には映った
もしゲンズブールが生きてたら嫉妬するような男だろうなと
でも性的にはゲイ?を匂わす程度で、映画の中では深く触れられてなかったね
ヘテロセクシャルならば、かなり女性にモテてそうな人だとは思ったけどね

、、、なんだけど
アルバムも多数持っているんだけど
個人的にはなんだか「惜しい」音楽性なんだよな
なんだろう、「黒さ」があまりないからかなぁ
クラシックからパンク経由のヒップホップ経由のピアニスト
根っこがクラシックというのを堂々と出してる感じが
良くも悪くもパンキッシュには聴こえても
俺の好きな色には聴こえなくてね

エネルギーにはただただ感服
ほんでもって
「俺はどうすべきだ??」
なんて思いながら帰途につきましたとさ

興味を持った方はこちら

「黙ってピアノを弾いてくれ」公式ホームページ
http://www.transformer.co.jp/m/shutupfilm/

*****

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『調律師』
熊谷達也 著

これは古本屋でぱっと目について購入してみた本

ピアノにまつわる本はつい読んでしまうが
ヒット作
「羊と鋼の森」宮下奈都
「蜜蜂と遠雷」恩田 陸
などは、よく出来てるものの、テレビドラマ感が否めず好きじゃなかったが、これは良かった
音に色が見えるという共感覚というのがあるのはオリバーサックスの「音楽嗜好症」などで読んで知っていたけど、音に嗅覚が伴うなんて魅力的な設定の話を訥々とした文体で語られる感じがすごく良かった

ただ
解説にも書かれてたけど
途中までその「音に嗅覚が伴う共感覚」についてがテーマな本だったはずが
突如311東日本大震災が絡んできてしまうところで
少し言葉を失ってしまった

仙台在住の小説家がゆえ、避けられなかったことではあるのは、分かるんだけどね
そこらへんの良し悪しは難しいところだね

個人的には
せっかくなら「共感覚」を持った人の物語で終わってほしかった
結果この本は「共感覚を持った調律師が、東日本大震災に巻き込まれた話」
としての印象になってしまったから

というのが少し残念ではあったものの、
空気感・文体、ストーリー展開は上記の女性作家のものより好きだね
ピアニストとしてすごくわかる感じがあるし
女性作家にありがちな「こうでしょ」という断定がない
読者に夢想させる余裕がある文体、とでも言えばいいだろうか

そういう意味で
この本はカズオイシグロの「夜想曲集」の空気感とも近いものを感じたね
音楽と人との関わりをポップではなく、俯瞰で語ってる感じが



by jazzmaffia | 2018-10-24 00:04 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Book : 「人生、60歳まではリハーサル」

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「人生、60歳まではリハーサル」NORA(Orquesta De La Luz) 著
出版:主婦の友社

来年2019年には35周年を迎える
オルケスタデラルスのボーカルのNORAさんが本を出しているのを知ったのは
江川ゲンタ氏主催のDisco Nightというイベントにて

このタイトルの「人生、60歳まではリハーサル」って言葉は聞き覚えがあって
「これ、映画のブエナビスタソシャルクラブで90歳のコンパイセグンドが言ってましたよね?」
とNORAさんに聞いたら
「そう、まさに私も本人に会って言われた言葉なの」と

映画の中で言っていた
「俺の夢は子供を作ることだ」も本人から直接聞いたそうだ

その伝説の言葉を直に本人から聞いて衝撃を受けて
それを座右の銘にして生きてきたというNORAさんが
半生を振り返りつつ、これからの夢を語る本を出しちゃった!
「それは買います!」
と早速購入して読みました

いやあ面白かったです
下手な小説の百倍面白い
それが全部体験談なんだもの

NYにデモテープを片手に乗り込んで
それが元でみるみるとキャリアが広がっていく前半は
映画以上にドラマティックで感動的だし
中南米の珍道中なんて驚きを超えて笑っちゃう
機材が用意されてないやらは当たり前で発砲事件まで起きちゃったりするしね

タイトルもそうだし
「小さいことを気にしなければ、大きなことも気にならない」
「悩んだ人ほど、本当のポジティブになれる」
なんてシンプルな言葉は
すっと身体に入ってきて共鳴する
俺もまさにそう思いますv

音楽ビジネスに限らず
アメリカ的な資本主義社会の中にいると
どうしても
若い人、新しい商品
がターゲットにならざるを得ず
従って、
若いうちに金をためて、のんびり老後を
というのが美学として蔓延しがち
結果
渋いものや伝統をないがしろにされがち

いやそうじゃないでしょ
日本だってもともとは知識の宝庫である
年寄りを重宝してた側面もあるでしょ??

ま、こうした言葉は
すでに中高年の人には勇気を与える側面はあるけれど
それだけじゃ勿体ない

若い人にも
どうやってこの長いようで短い人生を楽しく生きていくか?
という長期スパンで考えるきっかけになるといいよね
20代前半までが旬
なんてのは周りに言わしておけばいい
もちろん若いがゆえの楽しさ楽しみ方もあるさ
でも
その先にも楽しいことはたくさんたくさん待っている
ってことが伝われば
今ある苦しみ、悩みもポジティブに捉えていけるようになる日がくる
気がするんだ

そんな俺も今49歳
40代の最後の歳を過ごしてるんだけど
今までで一番楽しいよ
実際にキャリア的にも一番いいキャリアを築けた40代になったよ
周りがどうあれ、音楽愛だけで突き進んでこれたからかなぁ

つまり来年は俺も50歳だ
半世紀だ!
すでに発表してる誕生日イベントはめっちゃどでかく出来そうだし
他にもそこに向けて今進めてることがあるし
50になる男だから出来ることを全身全霊でやるだけだね

、、、、そんなこんな
いろいろイメージが膨らむ
シンプルでドラマティックな
「日本ラテン化計画」本でした

PS: NORAさん、来週宮古島でよろしくですv v
https://mmc.okinawa/
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by jazzmaffia | 2018-10-21 14:24 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Album :「球体」by 三浦大知 2018

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「球体」by 三浦大知 2018

よくいく中古レコード屋に行った時にこれはかかっていた
気になる、日本語の音楽がかかっていた
その店は滅多に和物をかけないから余計気になった

そして俺は少しズルをした
Shazamをしてしまった
そして想定外の名前が出てきた
「三浦大知」

そして店で会計を済ます時に声をかけた
「今かかってるのは三浦大知、ですよね?いいですねこれ?」
そしたら店のボスは
「音楽通の間で話題になってるって話だったんで、聴いてみてるんです」
と答えた
そして、その日のうちにCDを俺も買って帰った
(その時に、このCDが、発売後二週間経ってたことを知るんだけど、、、汗)

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彼の最新の洋楽吸収っぷり
それをうまくJ-Popに消化する感じは以前からチェックしていたし
仕事をしたことも少々だけどあった
彼は常に
<洋楽に近づこう>
というスタンスのように、俺には見えていたのは確かだ

それがこの作品は全曲日本語詩だ
それもまさに「詩」だ
冒頭からしてこうだ

思えばこれまでの人生
海原に浮かぶ一艘の舟
身を粉にし得た対価で
どうにか防ぐ波風

なんという冷徹なくらいの客観視
この言葉にやられ、
Tr-08「対岸の掟」で連呼される、

まだ中継地点
また修正して
まだ中継地点
また休憩して

にやられた

そして、全身全霊で演じられる、
付属するDVD「球体」独演
にやられた

そう、三浦大知、といえばダンスも必須なはず、
音だけを聴いていると分からなかったものが
映像の中で、かなり引いた映像の中で
全身全霊で演じられる独演舞台
これにやられた
(最後の方にやっと、寄りの映像になる、そこがまた感動的なんだけど)

なんなら映像作品のみで発表したかったのではないか?
なんなら一人舞台作品という形で完結したかったのではないか?
というくらいの美しさ、
そして胸を打つ言葉たち、、、

10歳の頃から表舞台に立ってきたが故の
常にキャリアのピークを更新してきて今がピーク!という彼が故の
彼にしか分からないであろう苦しみ・悩みを
毒という形ではなく
自問という形で消化・昇華した様には
胸を打たれる

俺自身も一匹狼を自称してたりする訳だから
なおのこと冒頭の言葉は胸を打つ
「俺とも共鳴してるじゃないか!」
「俺、この感じ、欲しかった」
というある種の既視感・既聴感

内田樹が村上春樹を分析する時に
「彼の文体・物語は、さも『この物語は私のために書かれたものじゃないか!』
という既視感を与えることの出来るように、ある種の、
人類史上ずっと流れている物語の金脈を獲得している」
的なことを言っていたが、
この三浦大知「球体」もまた、
多くの人に既視感を与えるであろう、物語の金脈を獲得した「詩」で溢れている

三浦大知自身が、自分ととことん見つめ合い、問い合わせて紡がれた言葉の数々
それを音楽に昇華する時に複数のプロデューサーは要らない

そう、このアルバムの音楽は全てNao' ymt氏によってプロデュースされている
そこがまた素晴らしい!
彼の持つ、ドープでダークな、今っぽさ(と言うと浅薄かもしれないが)あふれるトラックと
三浦大知の言葉は不思議に調和している

これは気に入った曲を1曲買いをする作品ではない
アルバムで聴くべき作品だ
彼ほどのポジションにいながら、
シングルを全く意識していないトータルアルバム
そして全曲にMVがついているようなまとめ上げ方
少なからず、Beyonce"Lemonade"などの
映像作品と同時に音楽を発表するという形の影響は受けただろう

そう、
自分を掘り下げて掘り下げた結果の作品が
世界的な旬な流れともリンクしている
洋楽を敢えて意識せずにとことん自問しながら作ってみたら
結果洋楽的な(悪い意味じゃないよ)ワールドレベルなものになっちゃった
そんな感じがする
そこが美しい、アートだ

ピカソは世情をチェックしながら作品のあり方を更新して、ヒット作を出し続けた絵描きだが
セザンヌはただただ絵と向かい合ってきたことで、ヒット作を出し続けてきた絵描きだ
という話を最近読んだが、
少なくともこの作品「球体」はセザンヌ的自己掘り下げ系とも言えるだろう

沖縄出身な感じも、露骨でない形で
ピアノの音程選びを通して表現されていたりもする

、、、ああ、賛辞が止まらない
そんな作品は、久々かも
是非みなさんにも聴いてもらいたい
そしてこういう表現のあり方がもっともっと認知されてほしいw
なんなら俺も関わってみたい!!

MVがどんな感じか?は
こちらの「球体」特設ページで見れます

by jazzmaffia | 2018-07-24 01:44 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Book : サブカルな人たちの本は今こそオススメ

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微妙なニュースが大きく取り上げられることが多い今日この頃
そんな現況に辟易してるあなたは
こういう本を読めばいいと思う

俺のようにニヤニヤしながら読める人もいれば
入っていけない人もいるだろう
好き嫌いは大きく別れる、だろう

だから「サブカル」なんだよね
もちろん本人たちも進んで表な「メインカルチャー」ではなく、
裏な「サブカル」であろうとしたわけではなく
自分を客観視してみたらそうだった、という感覚の方々
その客観視できつつも、自らの衝動に素直であろうとする方々
そんな方々の音楽こそそれなりにコアなものだったりするけど
文章にすると意外やポップだったりする

今回はこの3冊を一気に紹介しておこう

両脇にある文庫本は
キンショーこと筋肉少女帯として知られる大槻ケンヂ著作
「行きそで行かないとこへ行こう」新潮文庫
「のほほん人間革命」角川文庫

どちらもタイトルこそ違うけど
著者がいろんな冒険やチャレンジ、、、
というと格好いいが、要は自分がそそられることに手を出してきたレポ
その選球眼がいちいち「裏」な感じで面白い

カレーについて熱く語ってみたり
ホモ映画館、ストリップ劇場、日光江戸村などに「行ってみた話」な前者と
「人間革命」なんて大風呂敷を広げながら
UFOを信じる人たちのレポ
合法ドラッグを求めて、サボテンを煮詰めて食べてみた話とか
現状「合法」な範疇での快楽探検記な後者
いずれも
街のすぐそこにある痛み・闇を気づかせてくれつつ
なんだかすっきりする、ネジを緩めさせてくれる本たちでした
電車内などで読んでるとニヤニヤしちゃうこと請け合いなので要注意ですw


そして中央にあるのは
O.L.Hこと面影ラッキーホールの二人による、
性の悩みのQ&A集

「けだものだもの〜O.L.H.のピロウトーク倫理委員会」ele-king books

これがまた痛快なくらいひどくていい
人間誰しも性の悩みはあるわけで
事件を起こしちゃった人だけに限ったものではない
動物としては当たり前に持っているはずの「性欲」
その「性欲」に対してここまで痛快にQ&Aで答えつつ
最後は処方として音楽なり本なり映画なりを紹介する、
その感じは本当痛快!!の一言です

下品の極みに漂う慈愛と純真 by 田口トモロヲ

よく言って下劣で無責任
悪く言って気分爽快
他人事天国!!  by 都築響一

早く買わないと「発禁」だぞ by 安斎肇


この帯コメントに表れてる内容ですが
ちゃんと哲学的だったり音楽分析、歴史分析も混ぜてくるからね
そこが俺も読破しちゃった所以かな

例えば性教育な話の流れから
「新人育成にもいろいろあって、魚類の産卵みたいに何万個産んで、一人孵ればいいや、という文化と、人類的な一人一人を丁寧に産み育てる文化があるんですよ」
なんて俯瞰してる視点になったりする

昭和歌謡の頃の作家と演者の分業時代の歌詞と
現代の歌い手本人が書く私小説的歌詞のあり方の違い
、、、なんて話も織り込まれてね、ウンウンって話もあったりする

でも下ネタ、それもなかなかの下ネタっぷりなので
大槻ケンヂ本以上に要注意です!
とだけお伝えしておきましょうw



by jazzmaffia | 2018-04-30 20:28 | SWING-OによるReview | Comments(0)

Movie : "私が殺したリーモーガン〜I Called Him Morgan"2016

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"I Called Him Morgan"
~私が殺したリーモーガン/ヘレンは彼をモーガンと呼んだ~
カスパーコリン監督 スウェーデン・アメリカ共同制作 2016

リーモーガン
もちろん知っている
彼が参加してた頃のArt Blakey & The Jazz Messengersと
ソロ作は"Sidewinder""Speedball"くらいしか把握していないし
正直音色もKenny Dorhamと区別つかなかったりもする

"Sidewinder"などはジャズロックとも言われ、
ジャズ作品としてポップチャートも駆け上がった、
大ヒット作だということも知っている

若くして亡くなったことも知っているが
ジャズ界はそんな人だらけなので
個人的にはワンオブスーパージャズマン
くらいの認識だ

でも、なんか惹かれて
渋谷Uplinkに見に行ってきた

見てて思ったのは
今日び、リーモーガンはおろか、
Miles Davisすらも知らない人が多数になりつつある時代だよなと

これからどうやって
ジャズの「あの頃」を後世に伝えて行くか
伝わっていくのか?
というのは、まさにこれから再考されていくんだろうなと

そんな折にこれから大切なのは
「大ヒットしたかどうか」
「誰に影響を与えたかどうか」
などなどのウンチクではなく、
圧倒する音色だったり楽曲だったりする気がする

そんな意味では
Miles Davisのミュートトランペットは
その音色そのもので後世に残っていくものだろう

そしてこのリーモーガン
曲も多数名曲は残しているが
今回改めて映像で見たときの
音の太さがすごかった
このぶっとい&温かい音でこのアドリブが出来るのは
「天才」と呼ばれてきたのもわかる

彼のジャズ史に置けるどうのこうのを知らなくても
この「音色」にはやられるのではないかな

先日の話の続きにもなるけど
これこそ「肉体的」な音だなと
つまり「個」の力の凄さでもある
(「精神」と「肉体」どっちが先か http://jazzmaffia.exblog.jp/26388501/ )

映画のストーリー自体は
若くして大活躍してきたトランペッター、モーガンが、
ドラッグでもって脱落していき、
そこを救った年上の女性ヘレンがのちに奥さんとなるが
その後大活躍していく最中に浮気が元で
その奥さんに射殺されてしまう
、、、という史実を、残されたヘレンのインタビューや
まだ健在のジャズミュージシャンたちのインタビューと共に追っていく
そんなドキュメンタリー
初出と思われる写真やライブ映像も多数で
よく出来ているドキュメンタリーでした

(追記:ただ、ジャズを全く聴いてこなかった人に伝わる「映画」かどうか?と言われると正直微妙だと想像されます)

彼をよく知らない人も
彼、モーガンの音は触れてみるために見に行ってみるのは
ありかもしれないね
でも音源を聴いてみるだけでもいいかも??
とも思わなくはない 笑

な訳で、
映画でもエンディングで使われていた
この曲でも聞いてみてくださいませ

"Search For The New Land" by Lee Morgan 1964
https://youtu.be/YDfkkRa1VA8



映画情報はこちらです


PS
ジャズにまつわる映画、
ロックにまつわる映画はいろいろ出てきつつあるけど
Marvin Gayeもまさかの父親に殺されてこの世を去ったレジェンド
彼の映画とか出来ないんだろうかね?
リーモーガンが40年以上経ってから映画になった訳だけど
Marvin、Donny Hathaway、Curtis Mayfieldなどを振り返る映画なんかも
そろそろ出てきていい時代な気がするな



by jazzmaffia | 2018-01-30 21:17 | SWING-OによるReview | Comments(0)