2014年 12月 28日
今年いちばん聴いた作品は・・・
今年もまた面白い新譜とも沢山出会えたし、
知らなかった旧譜とも沢山出会えたんだけど
職業柄、というか俺の性格上、
漁るほうが先行して、
なかなか
「聴きまくりました!!!」という作品はない
4、5回も聴けば結構聴いたほうってくらいだからね
そんな俺にも関わらず、
今年間違いなく50回以上は聴いた作品がある
それがこれだ

"Thelonious Himself" by Thelonious Monk (1957)
この、半世紀以上前のジャズピアノ作品は
ジャズ界では名作とされる作品なんだけど、
それを何故また改めて聴いているかというと
もちろんモンクのピアノが大好き、というのもあるんだけど
ある実験を自分の体でしてみたかったからだ
先に述べたように、
昔は何度も聴きまくった作品があったが
最近はめっきり減ってしまった
昔はもちろん金もなかったし、インターネットも無かったから
手に入れたお気に入りの作品を聴きまくって、
結果そらで歌はもちろん、アレンジまで覚えちゃう、
なんてことがよくあった
気に入った訳じゃない、
先輩に「これが分かったら一人前!」と言われた作品とか
本や雑誌で見た「名盤!」とされるものを
頑張って何度も聴く、ということも沢山してきた
そう、ある種この
「頑張って何度も聴く」
という行為は俺の音楽観の基本かもしれない
例えばブルース、
18歳のころに初めて、ブルースを知るんだけど、
「あ、こういう感じね」
「12小節の3コードね」
「なんだ簡単じゃん!」
という印象で、
結果
「なんでこんなシンプルな音楽をいいって人が沢山いるんだ??」
という疑問だけが残った
そしてピーターバラカンさんの本に出会ったりして、
ニューオーリンズのブルースはまた独特で面白いことを知ったり、
ブルースに影響を受けたサザンロック〜スワンプロックを知ったりして
それらを
魅力が漠然としか分からないのに
なんども聴いたり、弾いてみたりしていくうちに
あるときフワッとその神髄が見える瞬間が訪れるのだ
例えるなら、
なんども同じ料理を食べているうちに
その素材、味付けの違いに敏感になり
そこを楽しみながら食べれるようになる、
て感じかな
その瞬間はまさに快感なのだ
そしてその快感を快感として積極的に経験を重ねて行くと、
自分の生活に活かすことが出来るようになる
今の俺のピアノスタイル、アレンジスタイルはそうやって出来ている
ミュージシャンじゃない人も、
その「快感」を知ることが出来たら
きっと世界の見え方が一つ変わるはずなんだ
何せその「快感」とは「扉を開く」快感だからね
残念ながら現代は
その種の「快感」を求める人は減っている気がする
扉を開くにはどうしてもそれなりの時間がかかる
「頑張って聴く」時間をつくらなきゃいけない
考える時間もつくらなきゃいけない
妄想する「間」の時間も必要だろう
今はそんな時間がかかるものより
コンビニエントなものが主流だ
パッと聴き魅力的でない音楽はスルーされるし
パッと見よく分からない芸人はテレビに呼ばれない
でもそんな使い捨て消費な社会のあり方に限界が来ているのは
皆さんご存知の通り
このBLOGでも何度も言ってきた通り
色んな先人の経験、知恵を再び必要とする時代になることは間違いないだろう
*****
で、本題に戻る
俺が何故このアルバムを何度も聴いているのか?
て話だったね
話がちょっと壮大になってしまったけど
何度も聴いている理由は簡単
この、少し難解でもあるモンクのピアノスタイルは
これまでずっと俺の中で「リスナーとして」魅力的だったんだけど
自分の体の中に
この「モンクのエッセンス」を入れたい!と思ったからなんだ
実際、こうして何度も聴いていると
どの音を弾いているのか少しずつ聞き分けられるようになってきたし
彼の数多くあるアルバムの中でこれが何故名盤とされるのかも分かってきたし、
実際本人も他の作品と比べても、
より気持ち良さそうに弾いているのが分かるようになってきた
特にこの
A-3"Functional"
は2014年最も俺の体に共鳴した曲となった
この、ブルースを解体したようなブルースを
なんと9分以上も1人で弾き切っている
そして本人もよほど気持ちよかったのか、
終わり方が可愛い
終わり!・・・と思いきや・・・と思いきや・・・
とモンクにしては珍しく尾ひれが沢山ついた終わり方をしている
まるで汽車が遠ざかって行くような終わり方だ
もちろん1年聴き込んだくらいでは
「モンクへの道」は片足突っ込んだくらいに過ぎないことは
俺自身の体がよく分かっている
でもあの「快感」を得るために
時間かかっても向かってみたいなと思っている近年今日この頃なんです
また来年もどこかで
「モンクへの道」な話をしてみようと思う
▲ by jazzmaffia | 2014-12-28 14:17 | ひとりごと | Comments(0)